三重県警察歯科医会 会長   辻  哲


 この度、三重県警察歯科医会の会長を拝命いたしましたので、一言ご挨拶を申し上げます。
 
  私たち歯科医師は通常の歯科医療に加え、警察からの依頼を受けて、災害や事故等で亡くなられた方のご遺体の歯や口の中の状態(=歯科所見)を、生前に歯科治療を受けた際の記録(カルテやレントゲン写真等)と照らし合わせて、身元の確認を行う役割を担っています。

  警察歯科医や警察医が大きく国民の注目を集めたのは昭和60年の日航機墜落事故の時でした。これを契機に全国で警察医会設立の動きが広がり、三重県でも昭和61年8月に三重県警察本部、三重県医師会、三重県歯科医師会の協力の下で「三重県警察医会」が設立され、長年にわたり医師と歯科医師が合同で研鑽を重ねてきました。平成23年3月に発生した東日本大震災では、被災地はもちろん全国からかけつけた歯科医師が厳しい環境の中で身元確認作業にあたったことはメディア等により大きく報道されたとおりです。(三重県歯科医師会からも歯科医師が派遣されました)。この時、警察歯科医や警察医が様々な貢献を果たし得たのは平時からの備えがあったからにほかなりませんが、私たちの想像をはるかに超えた規模の大震災が、いくつもの新たな課題を浮き彫りにしたのも事実です。

  私たちが暮らす三重県は、南海トラフを震源とした巨大地震等が発生した場合には、東日本大震災と同様に甚大な津波被害が起こることが予想され、これに備えた体制作りが求められています。三重県警察医会では今後の大規模災害に立ち向かうには歯科医師と医師がこれまでと同様の緊密な連携を保ちつつも、それぞれの専門性をさらに活かすことが必要と考え、組織の形態を改めることといたしました。

 平成27年7月に新たに設立された三重県警察歯科医会は、三重県警察本部から嘱託を受けた警察歯科医と公益社団法人三重県歯科医師会により構成されます。この組織では平時より警察の捜査等に協力する警察歯科医に加え、大規模災害時に三重県歯科医師会の会員が必要な役割を果たせるよう、法歯学等も含めたより専門的な研修等を実施していく予定です。

  平時においても有事においても、県民の皆様のための活動ができるよう、各関係機関と協力しながら活動していきたいと思っておりますので、ご理解とご協力をお願いいたします。