歯のオアシス~PARTⅢ~ 児童虐待防止の一端担う
歯科医師は子どもたちと接することの多い職業です。診療所での治療はもちろん、乳幼児健診や学校健診、歯みがき指導など、いろいろな場面で子どもたちとかかわります。
子どもたちの歯と口の健康を守るのは健やかな発育のためですが、それも望ましい育ちの環境があってこそ実現できるものです。
ここ数年、マスメディアなどで児童虐待にかかわる痛ましい事件の報道が後を絶ちません。歯科医師もまた、子どもたちを守る責任を持つ大人として胸を痛めています。
少しでも早く、そうした虐待の可能性に気付き、深刻な事態になる前に子どもたちを救いたい。そう願う歯科医師が専門性を生かして、児童虐待防止の一端を担えることが明らかになってきました。
県内で、児童相談所の一時保護所に入所している子供の歯や口を調査したところ、対照とした子どもたちよりも虫歯が多く、また虫歯があっても治療されていない場合が多いこと、さらに虫歯を予防するための生活習慣が身についていないことが分かったのです。
児童虐待と聞くと、暴力によるけがを想像するかもしれませんが、虐待の半数を占めるのは育児放棄(ネグレクト)とされ、身体的な虐待以上に大きな問題とも言われています。ネグレクトは外傷より早期に発見することが難しいものです。しかし、その兆候が虫歯の多発や放置として口の中に現れることがある。歯科医師はそれに気付くことができる可能性があるのです。
もちろん、虫歯が多ければ即、虐待と安易に結びつけるわけではありません。そうした状態になった理由を、学校を含む関係者とともに考え、虫歯予防のための指導にとどまらず、子どもたちの育ちの環境全体に目を向けたサポートを行うことが必要です。そうした体制作りのため、歯科医師会では児童虐待防止にかかわる研修も継続して行っています。
児童虐待防止の啓発パンフレット
2010.7.25 中日新聞三重版掲載