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口の中の歯が多数抜けると、食事は不自由でなりません。そこで「入れ歯」が登場します。日本に現存する一番古い入れ歯は一五三八(天文七)年に七十四歳で亡くなった、和歌山の仏姫(ほとけひめ)という尼さんのものです。
当時の入れ歯は、木でできていて髪をとかすくしと同じ柘植(つげ)が使われています。形態も自分の歯が一部残っている部分入れ歯や、全く歯がない総入れ歯など現在とほとんど変わりません。
また本居宣長も日記の中で、「入れ歯といふ物をして、またよくかまるる事をよろこびて、『思ひきや老いのくち木に春過ぎてかかるわか葉のまたおひんとは』(=春に朽ち木が若葉を茂らすように口の中にまた歯が生えるとは)」と入れ歯の入った喜びを表現しています。
このように入れ歯は、歯をなくしても食べる喜びを取り戻したり、発音がはっきりして会話を楽しむことができます。しっかりかみ合わせることで体のバランスをとりやすくなり転倒の防止にもなります。
一方、同じ日記の中に「今日は入れ歯を修理してもらった」というようなことも書いてあります。やはり入れ歯は使っているうちに歯の部分がすり減ったり、歯茎と合わなくなったりします。また部分入れ歯の場合は残っている歯に虫歯ができたり、歯周病になったりしますから自分の歯の検査も重要です。
取り扱いについても部分入れ歯は入れ歯を安定させるバネがありますから指でしっかり入れるようにしてください。決してかんで押し込まないようにしてください。食後に入れ歯も自分の歯もしっかり磨くことが大切です。入れ歯も自分の歯もせめて数ヶ月に一度は歯医者さんでチェックしてもらってください。 |
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