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PARTⅢ |
毎年八月になると、テレビのニュースなどで、一九八五(昭和六十)年の日航ジャンボ機墜落事故を振り返る特集が組まれます。未曾有の惨事を風化させることなく、さまざまな教訓を学ぼうという思いの表れでしょう。
あの時、犠牲者の身元確認のために、事故現場となった群馬県の歯科医師たちが力を尽くしたことをご存知でしょうか。
歯の形や大きさ、歯の治療痕などは人によって異なります。歯は高温の熱を浴びたり時間が経過したりしても変化が少ないので、DNA鑑定が行えない場合でも有効です。かかりつけ歯科のカルテやエックス線写真が残っていれば、身元を特定する有力な手掛かりになるのです。
五百人を超える犠牲者の身元確認作業は想像を絶する難事だったようです。そこで歯科医師たちが大きな貢献ができたのには、もう一つ理由がありました。実は事故の一年半前に、群馬県では医師と歯科医師が参加した警察医会が設立されていたのです。
この事故を契機に「警察歯科」の役割が広く認知され、全国で警察歯科医会が設立されるようになりました。三重県では八六年に、群馬県と同様に医師と歯科医師が合同で三重県警察医会を立ち上げました。以前から医師たちは事故や災害で亡くなった方を医学的に調べるために警察に協力していましたが、身元の特定などのために歯科医師も協力する体制が整えられたのです。現在、県警察医会には四十人の歯科医師が所属しています。
幸い、現在まで会が組織を挙げて活動しなければならないような大事故、大災害は県内では起きていません。しかし、万が一の時に迅速にその役割を果たすためには平時からの準備が肝要です。会では県医師会、県歯科医師会、県警の協力のもとで毎年、研修を行っています。
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